忍者ブログ
http://es21impre.blog.shinobi.jp/
このblogは、アイシールドで出てくる戦略・用語を分かりやすく説明する事を目的とした感想blogです。火曜日23時頃更新予定(週によって前後あり)。本家サイトはhttp://fake.s22.xrea.com(プロフィール部分にリンク有)
 
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

泥門デビルバッツvs.神龍寺ナーガ
スパイクフェイクからのモン太へのロングパスが成功。
勝利へ望みが繋がるか……という所で
奇襲に気づいていた阿含が、時計を止めないように
きっちりサイドラインの内側にモン太を倒してボールデッド。
そのまま時間は流れ、フィールドでの時計は
残り時間0となってしまいました。

セットに向かう途中で時計が0となり
崩れ落ちる泥門の選手達……
そこへ阿含は容赦ない言葉を投げつけます。
長年の夢への最後のチャンスだった栗田君とヒル魔さん。
栗田君は夢が破れた事から悔し涙を流し、
ヒル魔さんは静かに敗北を受け入れようとしていました。

奇跡は起きなかった……誰もがそう思っていた所に
審判が時計を戻すよう指示してきました。
審判の指した先には、サイドラインの白線部分に
えぐり取られたような跡が……
その跡はモン太が起こした奇跡でした。

モン太は完全にフィールド内で倒されていました。
しかし左手一本を伸ばしてフィールド外に触れ、
アウト・オブ・バウンズ(フィールド外)に出ていたのです。
このドライブ開始時(193rd down)のヒル魔さんの言葉
「ブッ潰される前に死んでも外に出ろ!」を
モン太はこの場面できちんと実行していたのです。


アウト・オブ・バウンズとなる条件は、
「選手が外周の白線から外側の部分に触れる」事です。
ボールを持った選手がフィールド外に出た場合は、
その時点でボールデッド(プレイ終了)となります。
しかし、ボールデッドになったからといって
必ずしも時計が止まるわけではありません。

ボールを持った選手が押し戻されて
プレイが終了した場合には、ボールが一番進んだ所まで
前進が認められる事となっています。
(フォワードプログレスと言います)
もし、タックルで押し戻されながらフィールド外に出た時、
ボールが一番進んでいた地点がフィールド内だった場合には、
その一番進んだ場所まで前進が認められる代わりに、
フィールド外に出たにもかかわらず時計は止まりません。

また、西部戦での鉄馬とモン太のボールの奪い合いを
思い出して頂きたいと思います。
あの場面では、両者がボールを持ったまま
鉄馬の体が地面に付きました。
この体が地面に付いた瞬間にボールデッドとなったので、
その後にモン太がボールをむしり取っても、
プレイ終了後の事なので意味が無くなってしまったのです。
ですので、ボールデッドの後にフィールド外へ出ても、
先に起きたボールデッドの時点でプレイが終了しているので、
フィールド外へ出た行為は何の意味も為さず
時計が止まる事がないのです。

という事で、フィールド外へ出て時計が止まるのは
「フィールド外に出た場所が、ボールが一番進んでいた場所」
という条件を満たす時になるのです。
今回のモン太の場合、前へと飛びながら
サイドラインの草をむしり取っています。
もし体の他の部分よりも先に、むしりとった場所の
草に触っていればその時点でプレイが終了となり、
フィールド外に出た場所=ボールが一番進んだ場所
という関係が成り立ちます。
ですから、この場合は時計が止まるのです。


モン太が右手を開くと、そこには白線の混じった
フィールドの一部が握られていました。
九死に一生を得た泥門デビルバッツ、
チームメイトみんながモン太を手荒く祝福しました。
そして観客もモン太のミラクルプレイに盛り上がります。

しかしあと20ヤードを残して時間は4秒を残すのみ……
1プレイには4~6秒ほどかかるので、
次のプレイが正真正銘のラストプレイとなります。
7点差を跳ね返すためにはTDを奪うのが必須条件。
高見さん&ショーグンの言うとおり、
まだまだ厳しい状況に変わりはありません。

しかしヒル魔さんは、この厳しい状況で
皆の顔色を変える位のとんでもない作戦を提案したようです。
しかも観客を使うという事で、
ヒル魔さんは観客を大いに煽り始めました。
これは通常ではありえない事です。


アメリカ4大スポーツの中でも、バスケとアメフトは
ホームチームの優位性が大きいスポーツです。
なぜなら、どちらも相手の攻撃時に、
声を使って選手の邪魔をする事が可能だからです。

モーションの説明(193th down)の時にも書きましたが、
アメフトでは、オフェンスは全員静止した状態から
プレイを始めなくてはなりません。
そこで全員にプレイ開始を伝えるの役目を
果たしているのが「Hut」のコールなのです。
この「Hut」コールが聞こえにくいと、
プレイが始まる前に選手が動いてしまう
「フォルススタート」の反則を犯し易くなるのです。

ですからお客さんは、ホームチームの攻撃の時には極力静かに、
相手チームの攻撃の時には騒げるだけ騒いで、
12人目の選手としてホームチームが
有利になるように協力するのです。
日本では時を選ばずに鳴り物の応援が有るので、
まだこのような状況には至ってはいませんが……
いずれそのような状況になれば、
もっと各地でアメフトが盛り上がるかもしれませんね。


勝ったと思い、一度は気持ちを緩めた神龍寺。
試合が終わったと思った後に
気持ちを引き締めなおすのは至難の業です。
泥門の方もそれは同じ状況のはずですが、
ヒル魔さんの奇策が緊張感を和らげたのかもしれません。
神龍寺ディフェンスは、選手達が固くなっていましたが、
その緊張に気づいた雲水の言葉も届かない位
泥門への応援の声が球場内に響き渡ります。
見開き2ページを使ったセナ君と観客席の描写、
皆が応援してくれている、という感じが出ていますね。
しかしヒル魔さんはさらに盛り上げようとしています。

最後の1プレイ……観客を使うというヒル魔さんの策とは?
そしてこのプレイを成功させて、
同点・逆転への望みを繋ぐ事が出来るのか?
PR
泥門デビルバッツvs.神龍寺ナーガ
一世一代の大博打、スパイクフェイクからの
モン太へのロングパスを試みました。

助走をつけたモン太が一休を置き去りにして、
一足早く捕球態勢に入りました。
しかし一休も懸命に追いすがります。

CBは「パスを決めさせない」事が仕事です。
しかし毎回パスを不成功にする事は不可能です。
ですのでパスを決められた場合には、
「それ以上進まれないように、きちんとタックルして止める」
事が必要となります。

実はこの2つの見極めのバランスが難しいのです。
パスがカットできると思って動いたのに、
パスを通してしまった場合には、
素早くタックルの体勢に移れずに
キャッチ後に大きな前進を許してしまう事となります。

ですので、CBはある段階で「パスをカットする」から
「キャッチ後に確実にタックルで仕留める」事に
意識を移す事が重要になります。
しかしNFLで先発するクラスになると、
一休のようにパスカットにこだわってしまう事もよく見られます。
中にはパスカットが出来るときも有りますが、
パスカットに失敗して大きな前進を許してしまう事も多いです。

ヒル魔さんのパスは、モン太に確実に通るパスではなく、
一休にカットを狙わせつつも触れさせないようなパスでした。
モン太と一休では、一休の方が足が速いですから
普通にキャッチさせて前進を狙っても追いつかれてしまいます。
という事で高見さんの言う通り、パスカットを誘って
一休の体勢を崩させ、一発ロングゲインを狙う……
ヒル魔さんならではの頭脳的なパスでした。

ヒル魔さんの意図通り、一休をパスカットに向かわせる事に
成功したのですが、一休は懸命に手を伸ばして
ボールに触れてパスの軌道を変えてしまいました。
No.1CBの誇りを見せてくれるような鬼気迫るプレイでしたが……
一休の凄さを一番理解していたモン太は
パスカットによってボールの軌道が変わるであろう事を予測し、
予めずれた軌道で待ち受けていました。
モン太らしからぬ頭脳プレイでパスが成功。
さらに一休が倒れている事から、体勢もゆっくり立て直し
ランアフターキャッチで前進を始めました。

そのまま前進を続けていくモン太に、
神龍寺のセーフティが迫ってきます。
しかしここでセナ君がブロックにやってきました。
セナ君のブロックによりモン太は独走、
そのままエンドゾーンに向けて走り続けます。
しかし懸命に走るモン太の目前に阿含が出現……
ヒル魔さんの策を読み、この時を狙っていました。


このようなビッグプレイ時には、10ヤードなんて
あっという間に進めますが、通常のプレイでは
3プレイかけて10ヤードも進めない事が良くあります。
ですからこのようなビッグプレイ時には、
一気に大きな前進を目指してしまうのは当然です。

しかしこのプレイ、モン太にも隙が有りました。
一休、そしてセーフティの芽力君をかわして、
追いすがる敵選手を気にしなくなってしまったのです。
それでもまだ時間が残っている状況だったので、
こういう状況ではサイドライン際を走って、
フィールド外にすぐ出られるようにしておくべきでした。
しかし、このプレイでは相手選手はもう残っているとは思わず、
そのまま直進してしまうのも理解できます。
NFLの選手の中にも、前へ進む事を優先してしまい、
フィールド外に出る事を忘れてしまう選手がいますから。

それに神龍寺相手にあと1~2プレイで
タッチダウンを奪えるプレイが出来るかと言うと……
プリベントディフェンスの項でも書きましたが、
エンドゾーンが近づくにつれて使えるフィールドが狭くなり、
人口密度が上がってランもパスも決まりにくくなります。
結果的に、このプレイよりもさらに難易度が上がる事となるので、
このプレイで無理をするのも理解できます。
(プリベントディフェンスについては
 146th187th193rd downを参照)

それでも……望みを繋ぐべく、ここはタッチダウンではなく
フィールド外に出て時計を止めてほしかった。
しかし18点差ではなく21点差にされてしまっていたが故に、
タッチダウンが必要となってしまった泥門。
もしFGの3点で追いつく状況であれば、
モン太はある程度進んだところでフィールド外に出て時計を止め、
とりあえずFGで同点に追いついて、
厳しいながらも延長に賭けるという選択肢も選べました。
しかし、あそこでの3点の失点が……
泥門にとっては重い枷となりました。

阿含のタックルでモン太はインバウンズ(フィールド内)で
倒されてしまい、時計が動き続ける事になります。
スパイクで時計を止めようにも、
39ヤードものロングゲインとなったプレイでしたから、
セット位置までの距離が遠すぎました。
みんなは走ってセット位置に向かいましたが、
そのままセットできずに時計は0になり、
試合終了を告げるブザーが無情にも鳴り響きます。
28-35のまま試合終了……奇手・奇策を駆使し懸命に追いすがった
泥門ですが、あと一歩、いや半歩、届きませんでした。
この敗戦でヒル魔達3人組の夢が潰える事に……
ヒル魔さんにクリスマスボウルへ行ってほしかったな。
泥門デビルバッツvs.神龍寺ナーガ
1TD差を追う泥門が、自陣3ヤード地点から
最後の望みをかけたドライブを開始。
まずは3プレイで1st downを奪い次へと繋げました。

続いてのプレイでも雪光さんがモーションしています。
作中では『インモーション』と表現していますが、
実況などでは『モーション』だけで言われる場合が多いので、
ここでは『モーション』を使います。
モーションについては前回の感想で簡単に触れましたが、
もう少し深く掘り下げてみたいと思います。


前回の感想でも書きましたが、オフェンス側の選手には
プレイが始まるまで完全静止が要求されます。
さらに全員が1秒以上静止した状態を保った後でないとプレイを
始める事が出来ず、ボールを動かした瞬間に反則となってしまいます。
(イリーガルフォーメーションの反則)

モーションはこの全員の完全静止1秒が過ぎた後に選手が動く事を
指すのですが、モーション自体にも色々と制約があります。
 ・前方へ動いてはならない(横や後方へならOK)
 ・2人以上の選手が動いてはならない
さらに1人のモーションが終わったあとに別の選手が
モーションする場合には、完全静止の1秒が行われた後でないと
2人目の選手が動く事が出来ません。
(守らないとイリーガルモーションの反則)

1回のモーションで2~4秒ぐらいの時間が使われるので、
高校アメフトのようにプレイ終了後から
次のプレイを始めるまでに25秒しかないと
複雑なモーションを用いたプレイは使う事が出来ません。
しかしNFLではプレイ間に40秒使う事が出来るので、
2回のモーションを使ったプレイも良く見られます。

またモーションと違うシフトというものが有るのですが、
これは多くの選手が一斉に動き、
フォーメーション自体を変えてしまう事です。
シフトをした時も、全員が完全静止1秒をしてからでないと
プレイを始める事が出来ません。
(イリーガルシフトの反則となります)

また作中で最前線と表現されている用語は、
スクリメージラインと呼ばれているものです。
両チームは置かれたボールを挟んで対峙するのですが、
ボールの両端に沿って無限に伸びる
相撲の仕切り線のような物が有ると
想像していただければ分かりやすいと思います。
その仕切り線がスクリメージラインです。
このスクリメージライン上に、オフェンスの選手は
7人以上並べておかねばなりません。
(6人以下しか居ないとイリーガルフォーメーションの反則)
そしてスクリメージライン上の選手は、両端(エンド)にいる
2選手以外はパスを取ってはいけない選手となります。

通常オフェンスライン5人が中心に、
左右にTEやWRを配して7人を並べることとなります。
ですから以前も作中で触れられていましたが、
オフェンスラインの5人は「ボールに触る事が出来ない」
ポジションになっているのです。
(例外的に審判に申告すれば、オフェンスラインの選手でも
 パスを受ける事が出来るようになります)

ちなみに、仕切り線の間のボールが置いてある部分、
相撲で言うと仕切り線と仕切り線の間が
ニュートラルゾーンと呼ばれる部分です。
そのニュートラルゾーンを挟んで、
スクリメージラインより手前側が自分のチームの領地です。
プレイが始まるまで、選手は自チームの領地から出てはいけません。
プレイ開始時にニュートラルゾーンや、
相手の陣地に入っているとオフサイドの反則となります。

このモーションにどんなメリットがあるかというと、
モーションしている選手がプレイ開始時にいる位置を
ディフェンスは読み取る事が出来ません。
たった1人の位置が確定できないだけでも、
ディフェンスにも大きな変化が出てしまうのです。

前回のプレイでは、雪光さんがラインの後ろに来た所でプレイが始まり、
中央突破のブロック役となりました。
そして今回のプレイでは、雪光さんはそのまま逆サイドまで走り、
アウトサイドのランプレイでのブロッカー役を務めました。
もちろんモーションをしてきた選手を囮にして、
逆サイドにプレイをする事も有りますよ。

本来パスに頼らなければならないシチュエーションですが、
泥門はセナ君のランプレイを中心に攻めて行きます。
本来はこんな選択はしないはずなのですが……
レシーバーの枚数が少ないですし、そのレシーバーのマークがきつい。
さらにサイドライン際もきっちり守られているとなると
選択肢が狭まってこうならざるを得ないかも。

そして神龍寺側は当然プリベントディフェンスを使用。
進まれても時間と攻撃権を使わせれば良いので、
思い通りにディフェンスが出来ていると言えます。
でもこういうプレイを続けるという事は……。

みんなが雪光さんのブロックに喜んでいましたが、
1秒も惜しい状況ですのでヒル魔さんにセットをせかされます。
そして再びヒル魔さんがスパイク、時計を止めます。
ヒル魔さんと十文字の頭良い組は、
きちんとタイムマネージメントが分かっていますね。
しかしヒル魔さんのスパイクは相変わらず凄い勢いです。

残りは38秒、セナ君もオフェンスでは
常に最高速を出さなくても良い状況とは言え、
ディフェンスでの無理がさすがに響いているようです。
時計のためにも、セナ君のために「スパイクしてくっきゃねえ」
だから「間髪入れずに即セット」、
この台詞が後々重要な意味を持つこととなります。

続いてのプレイでは、セナ君のランはフェイクで
夏彦へのパスが決まり9ヤード前進。
これで1st downを獲得しました。
そしてまたスパイク……ボール高く跳ねすぎ、
力入れすぎだよヒル魔さん。

残り31秒からのプレイはここでモン太へのパス。
しかしここは一休にパスカットされてしまいパス失敗。
ですがパス失敗なので、これで時計は止まります

残り27秒であと73ヤード……そろそろギャンブル的なプレイをしないと、
間に合わなくなってしまいます。
神龍寺側にもすこし安堵の表情が出てきました。
しかし阿含だけは、ヒル魔の性格から
何か裏が有るであろう事を察知したようです。

勝負に「たら・れば」は考えてはいけないのですが、
もし神龍寺側のFGでの3点が無かったら……
あと40ヤードほど進めばFGが狙える状況となり、
同点に出来る可能性もありました。
でも今は7点差、あと73ヤード進まねばなりません。

そして次のプレイでもランプレイ、
セナ君のランで5ヤード前進して1st down更新、
あれっ、5ヤードで1st down更新って事は
どこかでプレイが抜けたのか?それともミスかな?
そして次のプレイでは夏彦さんへのパスが決まり9ヤード前進。
しかしエンドゾーンまで59ヤードも残しながら、
残り時間は20秒を切りました。

スパイクするためセットをせかすヒル魔さん。
でもモン太だけがボケッと突っ立っていました……
実はこの行動が作戦だったのです。
一休はモン太が目前に来てセットすると思い、
まだ時間的に余裕があると気を抜いていました。
しかし、モン太のこの動きはモーションだったのです。
この前のシーンでボケッと突っ立っていたのは、
完全静止1秒の条件を満たすため。
ヒル魔さんに怒鳴られて動いたのも
予定通りの行動だったのです。
雪光さんがいつもより前にセットし、
スクリメージへ7人以上置く条件も満たしておきました。

そして静かに栗田君がボールをスナップしプレイがスタート。
ボールを持ちながらも、まだ演技を続けるヒル魔さん。
20秒を切ったこの状況では、
ロングパスはバレバレなシチュエーションだったのですが、
モン太のセットへの動きをモーションとして使って
相手の虚を突くとは……
これはどんな選手でも騙されるでしょう。

ここまでスパイクをするたびに大声で「スパイク」と伝え、
さらに不必要なぐらい強くボールを叩きつけて
スパイクを印象付けてきました。
さらにモーションするのも、雪光さんだけであるという
先入観を植えつけておいたのですから。

NFLでもモーションを使ったスペシャルプレイが見られます。
特に印象的だったのは、2005シーズンに
インディアナポリス・コルツが使ったスペシャルプレイ。

QBペイトン・マニングがセンターの後ろにセットした後、
守備体系を見て、戦略を練り直す為になのか
サイドラインへと向かって歩いて行きました。
この動きは、普通ならタイムアウトを使うと相手は思い込みます。
しかしこの動きがモーション扱いで
マニングがベンチへ向かう間にボールがスナップされて
プレイが始まるスペシャルプレイだったのです。
相手の虚を突き大きな前進に繋がったのですが……QBに関しては、
Cの股下に手を突っ込んでからはモーションをしてはならない
というルールが有った為、反則を取られてしまいました。
股下に手を入れたこと以外は、上で書いたルールは
守られていたのですけど……とても勿体無いプレイでした。

今回モン太がやったプレイは、1試合に1回どころか
1年に1回も出来ないようなスペシャルプレイです。
しかし、十重二十重に見せプレイを重ねていたので、
神龍寺ディフェンスに隙を作り出す事が出来ました。
モン太へのロングパスが成功し、勝利へ向けての僅かな望みを繋ぐのか?
泥門デビルバッツvs.神龍寺ナーガ
試合はいよいよ大詰め。
残り時間は58秒で、7点を追いかける泥門が
自陣3ヤード地点から最後の望みを賭けた攻撃を開始します。

「ブッ倒される前に死んでも外に出ろ!」と
ヒル魔さんはみんなに伝えています。
なぜなら追い上げるチームは、時間を無駄に使う事が出来ず、
残り時間をコントロールしながら前進していく必要が有るからです。
このような時間をコントロールしながら追い上げを図る
特殊なオフェンスを2ミニッツオフェンスと呼びます。

アメフトにおいて、時計が止まる要因としては下の4つが挙げられます。
 [1]パスが失敗する
 [2]タイムアウトを使う
 [3]フィールド外に出てプレイが終了する
 [4]1st downを獲得したとき
(3番目の項目は、残り時間が少なくなった時のみ適用
 それ以外のときは審判の合図で時計が動き始めます。
 4番目の項目は、残り時間が少なくなった時は
 適用されなくなり時計が動き続けます。
 NFLでは使われていません。)
これらをうまく使いこなし、残り時間をなるべく減らさずに
ボールを前に進めようとしていくのです。

ランプレイでは、ボールを持ってからフィールド外へ
出るまでに時間がかかってしまうので、
必然的にパスが中心(場合によってはパスのみ)の
オフェンスを展開していく事となります。
パスならば10ヤード以上の大きな前進も望めますし、
もしキャッチ出来なくても、パス失敗となれば
残り時間の減少が止まるからです。

しかし、ボールを持った選手がフィールド外に出られないと
残り時間がどんどんと減り続けるので、
次のプレイを急いで始めなければならなくなります。
泥門の最終ドライブ、最初のプレイはこれに当てはまります。
本来タイムアウトを持っていない泥門が
この状況でランプレイを選択するのは
ありえない選択ではあるのですが……。
だからこそ、裏をかいてをランプレイを使うのも
有りといえば有りなのです。
しかしセナ君のランプレイは、フィールド外に出すまいと
待ち受けていた阿含のタックルを受けてしまい、
インバウンズ(フィールド内)でプレイが終わってしまいました。


今度はディフェンス側に関してのお話を。
ディフェンスは得点差によって
2ミニッツオフェンスへの対応が少しずつ変わってきます。

FGの3点で逆転されてしまう状況では、
FGを蹴る事が出来る位置の手前で
オフェンスを止めるようなディフェンスをします。
(例えば自陣33ヤードまで進まれた場合には
 50ヤードという長距離のFGを狙わせる事となります。
 高校生で50ヤードはまず決まらないので、
 このあたりがデッドラインとなります。)

1回のTDでも追いつかない9点以上の差が付いている場合には、
得点をオフェンスに与えても時間を使わせる
プリベントディフェンスを使います。
(プリベントディフェンスについては
 146th down・187th downを参考にして下さい)

それでは相手にTDが必要な7点or8点差の場合には……
実はこの時もプリベントディフェンスを使うのです。
何故かというと、オフェンスがエンドゾーンに近づくと、
フィールドの奥行きが無くなり、
使えるフィールドがどんどん小さくなります。
こうなると人口密度が高くなり、
パスが決まりにくい状況になるからなのです。
ですから7点差のこの状況での神龍寺ディフェンスは、
エンドゾーン目前まで進ませても構わないけど
最後の一線だけは守る、と言うディフェンスになります。

逆に作中のような状況では、オフェンス側にとって
エンドゾーンまでの距離は遠いものの、
使えるフィールドはかなり大きいという状況。
このような状況では、神龍寺側は
アグレッシブな守りをする事が出来ません。
なぜなら、もしタックルをかわされてしまうとタッチダウンに
繋げられるような大きな前進を許してしまいかねないからです。
ですのでこの状況で神龍寺は、適度にゆるく守り
ある程度進ませて止めるという守り方をするのです。

神龍寺の思う壺となった1st downのプレイ。
インバウンズでプレイが終わったため、
時間がどんどんと減少していきます。
ここでヒル魔さんは「スパイク」する事を全員に伝えます。

上でも書いた通り、パスが失敗すると時計が止まります。
プレイ中にわざとパスを投げ捨てするのは反則ですが、
(43rd down「インテンショナルグラウディング」を参照)
時間を止めるためにボールを受け取って
すぐにパス失敗とするスパイクに関しては合法なのです。
スパイクは時計を止める事が出来るので、
ノーハドルでのプレイの伝達ミスを防ぐ事が出来ます。
しかし、プレイを無理やり終了させるものなので、
1回の攻撃権を消費してしまう「諸刃の剣」なのです。

ヒル魔さんはボールをスパイクし、残り時間49秒で
時計を止めましたが……ヒル魔さん強く叩き付けすぎ。
軽く投げ捨てる程度で良いのに(^^;
しかし最初のプレイで9秒の消費は大きいです。
まだ95ヤードも進まねばならないのに……。
しかしこの9秒の消費と引き換えに、
ヒル魔さんとまもり姉は神龍寺ディフェンスの
守り方の意志を確認していました。

この状況ですから、神龍寺は後方とサイドライン際を
徹底的にマークしており、中央は手薄。
そこを狙ってのプレイを入れた事が想像できます。

そして3rd downのプレイがスタート。
雪光君がモーションして、フィールド中央に向けて駆けて行きます……
って、モーションが本格的に使われましたよ。

・モーションとは
オフェンスは、ボールが動く=プレイが始まるまで
全員が静止した状態を維持しなければなりません。
オフェンスはプレイ開始のタイミングを知っているので、
やや有利な状況になっています。
そこで「プレイ開始まで動けない」という制約をかけて
バランスを取っているのです。
ただ、例外的に1人だけ動く事が出来るのです。
それがモーションなのです。

このモーションにも制限が有り、
前方へのモーションは禁じられています。
さらに2人以上が同時に動くのは反則となりますし、
モーションを終えた後に別の人がモーションを始める時にも、
その間に1秒以上の静止が無いと反則となります。

たった1人動くだけの事ですが、
これだけでもディフェンス側のマークを混乱させる事となり、
オフェンスの戦略が大きく広がるのです。

1プレイ目でランプレイを使い、スパイクで攻撃権を
犠牲にしてまで時計を止めなければならなかった泥門が
ここで再びランプレイ……タイムアウトも無いのに
こんなプレイ選択は本来やっちゃいけません。
しかし全員の気持ちのこもったブロックで、セナ君は8ヤードほど前進。
1st downの更新が微妙だったのか、
審判がメジャーメント(10ヤード進んだか計る事)をする為に
時計がいったん止まりました。
メジャーメントが無ければ時計は止まっていなかったのに……
狙って出来たのであれば凄いですよ、これは。

上で自発的に時計を止める方法を4つ挙げましたが、
偶発的な要因としてさらに2つの方法が有るのです。
 [5]1st downを獲得したかをチェックするとき
 [6]怪我人が発生する
この場合は[5]に該当しています。

本来はばっちり止めたはずなのに、メジャーメントという
偶発的な要素で時計を止められてしまった神龍寺。
阿含があんな表情をしてしまうのも頷けます。

メジャーメントで時計を止めた泥門。
残りは45秒で87ヤード進まねばなりません。
ここまでのように地道に進んでいては間に合わない距離。
どこで一発大きいのを狙ってくるのか、
ヒル魔さんが策を巡らすタイミングに注目です。
泥門デビルバッツvs.神龍寺ナーガ
セナ君が奇襲ブリッツから雲水をQBサックした上に
ファンブルフォース(ボールを落とさせる事)。
そしてボールを拾い上げてリターンを開始すると、
これまでの「避ける」走りから「戦う」走りに変えて
追いかけてきた阿含を抜き去ったセナ君。
ファンブルリカバーリターンTDへと繋げました。
(ファンブルリカバー → 落ちたボールを拾い上げ
 リターンTD → ボールを奪いそのままエンドゾーンへ走りこむ)

この試合初のセナ君のTD、さらにムサシのトライ・フォー・ポイントも
決まり28ー35とついに1TD差に追いついた泥門。
32点差という絶望的な点差から、ここまで何とか追い上げてきました。

しかし残り時間は5分しかなく、タイムアウトの残りは0……
タイムアウトが無いと時間の経過を止める事が出来ないので、
オンサイドキックで攻撃権を奪いに行くという選択肢も
考えられる状況です。
しかし、ここで失点すると2回の攻撃権が必要となり、
逆転の可能性がさらに低くなってしまいます。
オンサイドキックを失敗する事は、相手の攻める距離を
短くする事に繋がり、失点の可能性が高まります。

18点差と21点差での大きな違いの理由の1つがこれなのです。
18点差であれば、FGでの3点までなら許せる状況でした。
しかし21点差になった時点で、FGでの3点の失点が
許されない状況になってしまったのです。

喜びに沸く泥門に対し、追い上げられる経験がほとんど無かったであろう
神龍寺側には、精神的に追い詰められた感が有ります。
しかし阿含・一休は「自分が相手を叩き潰すんだ」
と言わんばかりに強攻策を主張します。

ここでの阿含と一休の台詞のシーンは印象的でした。
これまでは対等な相手とすら認めていなかった
セナとモン太に対し、名前で呼ぶようになった2人……
ライバルときちんと認めた上で、それを叩き潰そうとする。
こういう負けん気の強さを持っている事が、勝負に勝つことの
必須条件だと思いますので、とても良い描写だったと思います。


ここで雲水は2人の提案を受け入れ、「ゴールデンドラゴンフライ」で
時間を潰しに行く事を決断しました。

リードしている側が、安全なプレイを中心に使い
時間を潰そうとするのはアメフトでは常識中の常識。
ボールを持ち続ける事が出来れば、
相手に得点のチャンスが訪れる事は無いのですから。

しかしアメフトでは、プレイにおけるリスク(危険度)と
リターン(進める距離)も正比例になっています。
ボールを失う危険性の少ないランプレイでは、
1プレイで平均3~5ヤード前進できます。
しかしパスプレイの場合は、成功率は60%ほどな上に、
インターセプトをされる危険性が有りますが、
1プレイでの平均獲得距離は10ヤード近くになるので、
1st downを1発で更新できる事も少なく有りません。

ですので、安全なランプレイを使っているとあまり前進できず、
1st downを獲得する事が出来なくなってしまい、
相手に攻撃権を渡す事となります。
リスクの高いパスプレイを使えば、1st downを更新し続けて
相手にボールを渡さずに時間を使い切る事も可能となります。
しかしパスプレイの場合は、パスが失敗すると時計が止まり
相手に攻撃する時間をたくさん与える事となります。
さらにインターセプトなどによって
ボールを奪われてしまうリスクも大きくなります。

今神龍寺は7点リードしていますから、FGでの3点を加えれば
泥門は2回の攻撃が必要となるのですが……
3点を狙ってボールを奪われたら元も子も有りません。
ですからこの場面での神龍寺にとっての優先順位は
時間消費(ボールの確保)>ボールを前進>得点する事
という並びになります。

山伏先輩の言っていた安全策は、
ランプレイでボールを失う可能性を極力減らした上で
時間を使えるだけ使い、1st downが更新できなかったら、
パントでボールを相手陣に押し込む事です。
雲水の選択した「ゴールデンドラゴンフライ」は
パスプレイを使う事になりますのでリスクが高くなります。
ですから雲水が攻撃的な時間消費と言っているのです。


高校のアメフトであれば、3回のプレイで90秒強
(ハドル25秒+プレイ5秒が3回ずつ)を消費する事が出来ます。
攻撃的とは言いながらも、リスクをなるべく抑えるために
ショートパスとランプレイを中心にプレイを選択した神龍寺。
それでも1度は1st downを更新して、
さらに時間を使えるようになりましたが……
泥門も必死に抵抗し、一休のランアフターキャッチを許さず
パントに追い込んで望みを繋ぎました。
(ランアフターキャッチ → キャッチ後に前進する事)
残り時間が1分30秒を切っていましたから、
一休にランアフターキャッチで1st downを取られていたら
その時点でGAME OVERになる所でした。

1st downの更新は出来なかったものの
パントでボールを泥門陣奥深くに蹴りこんだ神龍寺。
雲水の台詞から、上で挙げた優先順位が分かってもらえると思います。
最良のシナリオは「得点を奪う事」ですが、
これはリスクがあまりにも大きすぎる。
ですので、次善の策である「時間をたくさん使いかつ
ボールをなるべく自陣から遠ざける」をきちんと達成しました。

泥門は、残り時間が1分でタイムアウトが0個……
18点差の場合、2回のTDのうち1回で2ポイントを
成功させていれば、ここはFGの3点で同点にできたはずでした。
ムサシは盤戸戦で50ヤードのFGを決めていますので、
敵陣33ヤード地点付近まで進む事が出来れば、
FGが成功する確率が出てきます。
(FGの際には後ろに7~8ヤード投げてセットし、
 幅10ヤードのエンドゾーンの奥に有るポールの間に
 蹴りこまないとならないので、敵陣○ヤードの○の数字に
 17~18を足した数がFGの距離となります。)
しかし今はTDが必要ですので、エンドゾーンまでボールを
運ばねばならず、進む距離が33ヤードも違ってしまいます。
これはかなり大きな差です……

18点差と21点差の違いの2つ目がこの点です。
3点を入れられてしまったが為に、最後に敵陣の一番奥までボールを
運ばねばならず、残り1分で100ヤード近く進まねばならなくなった泥門。
しかし可能性は低いものの、ミス無く攻める事が出来れば
進めない距離でも有りません。
ミスが許されないこの状況……
ヒル魔のクォーターバッキングに全てがかかります。
奇手・奇策を駆使して龍の尻尾まで辿り着いた泥門。
最後の攻撃を成功させる事が出来るのか。
泥門デビルバッツvs.神龍寺ナーガ
執拗なまでの阿含へのブリッツの前振りから、
ムサシ&ヒル魔さんの演技も加わった泥門一世一代の大博打が大成功。
セナ君がQBサックした上にボールをファンブルさせ、
そのボールを奪い取りました。

ボールを奪い取ったセナ君をよそに、
ムサシの鉄拳に怒るヒル魔さんがちょっと可愛いんですけど。
セナ君はリターンをそのまま開始しましたが、
阿含は素早い反応で戻ってセナ君の前に立ちはだかりました。

それぞれの期待を背に、阿含とセナ再び直接対決。
全力で潰しにかかる阿含に対し、
セナ君は何とかかわせる手段を探し続けます。
その間に距離は詰まり阿含がボールを狙って……
セナ君を潰すために手刀を叩き込もうとしてきました。

阿含の手刀、ボールを狙ってのタックルは
ディフェンス側にとっては基本事項です。
阿含のように相手を怪我させる目的ではまずいですけど、
ボールをめがけてパンチを繰り出すなどして
ファンブルさせようと常に狙っています。
他にもファンブルを狙う手段として、
モン太がやったようなボールをかき出す方法も有ります。

前後しますが、ここでセナ君は陸君の教えを思い出し、
自分の体を犠牲にしてまでボールを守ろうとしていました。
ここでの最高なシナリオは、セナ君がボールを
そのままエンドゾーンまで運び込みTDを奪う事です。
もしここで阿含に止められてしまうと、
TDを奪うまでにさらにプレイが必要となり、
貴重な残り時間がどんどんと削られてしまう事となるからです。

このようなディフェンスのリターンのプレイでは、
通常のオフェンスのプレイよりも容易く前進する事が出来ます。
ですので、リターンが出来るこのチャンスは
出来る事なら逃したくは無いのです。
ですがこの状況でボールを奪われてしまうと、
再び攻撃を止める所からやり直しになってしまいます。
残り時間が少ない中で2回の攻撃権が必要、
それもともにTDに結び付けなくてはならないという
厳しい状況ですから、せっかく奪ったボールを
再び奪い返される事だけは避けたい所です。
ですので、ボールの確保を最優先にするという、
鬼兵さんのアドバイスは至極まっとうなものです。

クリスマスボウルへ行くために……
セナ君がボールの確保を最優先にした所に、
阿含が再び「GAME OVERだ」という言葉をセナに投げつけます。
この言葉を聞いたセナ君の目が変わりました。
これまで「かわす」事しか考えていなかったセナ君が、
阿含に向けて手を伸ばしていったのです。

RBの技術の中にスティフアームという技術が有ります。
これはボールを片手で抱えながら、
もう片方の手でディフェンスの体を押さえ、
タックルされる事を防ぐ技術です。
112th downでアメリカにいたアイシールドが、
175th downでは変則的では有りましたが阿含が使っています。
しかし70th downでは、パンサーがスティフアームを使った時に
セナ君にボールをファンブルさせられたことも有りました。
攻撃的なランプレイなのですが、
ボールを片手で持つ事となるので危険も伴います。
しかしこのテクニックを使う事によって、
より前進する事が出来るのです。
実際、ボールを持った選手を見ていると、少しでも前に進もうという
本能が働くからか、自然と手が出てしまう場面がよく見られます。

セナ君はスティフアームのように阿含へと手を伸ばしますが、
一度は阿含の手刀で叩かれてしまいました。
しかし、阿含を倒そうという気迫を持ったセナ君は、
再び手を伸ばしていきます。
これまでは「かわす」事ばかりを考えていたセナ君が、
自らの力で立ち向かっていく戦士の意志を持った瞬間でした。
セナ君はまた一段階、精神的な成長を遂げました。
しかも2回目に伸ばした手はフェイクで、
そこからデビルバットゴーストに繋げて阿含を抜きにかかりました。

これで決まったか……と思いきや、
阿含も超反応で再びセナ君へと迫ってきます。
しかしここでセナ君は、スティフアームで阿含の死角から
ヘルメットへと手を伸ばしました。
そのままセナ君はヘルメットを押しきり、
阿含を地面へと叩きつけました。

ついにセナ君が阿含を正面から撃破に成功、
あとはエンドゾーンまでボールを運ぶだけです。
しかしここでTDとなり、キックが決まってもまだ7点差。
手の届くところまで来ていますが、まだ負けているのは事実です。
残りの約5分で最後のチャンスを引き寄せる事が出来るのか?
泥門デビルバッツvs.神龍寺ナーガ
残りは時間は8分ほどで、21-35と14点差まで追い上げた泥門。
しかし続いての神龍寺の攻撃時に、阿含がクロスオーバーステップを
使ってセナを抜いてしまいました。
ムサシの冷静な判断でサイドラインへ押し出しましたが、
20ヤードもの前進を許してしまう事に。

通常ランプレイでは、前進できる距離は3~5ヤードほど。
NFLの選手の中でも、1回の平均前進距離が5ヤードを
超える選手はめったに出てきません。
1プレイ当たりの平均が4ヤードという事から、
20ヤード進むという事が、かなりのビッグプレイである
と理解していただけるのではないでしょうか。

大きな前進を許して悔しがる黒木&戸叶ですが、それよりも問題が……
セナ君が倒れこんだまま起き上がれない状況になっていました。
泥門は最後のタイムアウトを使うと、
モン太がセナに肩を貸してベンチまで戻しました。
しかし、まだ2本差を追いかける状況にも関わらずタイムアウトを
使い切ってしまったのは、セナ君の足のためとはいえ苦渋の決断です。

セナ君の足が限界だとして、出場を止めるどぶろく先生に対し、
ヒル魔さんは「出す」とあっさり言い放ちます。
「言うと思った…」と思うセナ君、ヒル魔さんに慣れすぎです。

ここで、手を伸ばそうとしていたまもり姉よりも先に、
ムサシが止めに入ってきました。
病床に伏せる親父さんを引き合いに出した上で、
殴ってでも止めると脅しをかけてきました。
しかし、ヒル魔さんの意見は揺るぎません。
するとムサシがヒル魔に殴りかかりました。
気が済むなら殴れとヒル魔さんが言いましたが、
まさか本当に殴るとは……。
でもヒル魔さんにとっても苦渋の決断だったはず。
セナ君の足が潰れたら元も子も無いのですが、
ここで負けてしまう事はクリスマスボウルへの道を
閉ざしてしまう事と同義なんですから。

結局、セナ君をフィールドに投入して次のプレイが開始。
再びドラゴンフライで攻めてきた神龍寺に対し、
LBの黒木をブリッツで突っ込ませました。


通常守備側は、オフェンスライン5人に対し、
ディフェンスライン4人でプレッシャーをかけます。
オフェンスラインは1人余る事となりますが、
ブロックの力関係のバランスはこれでちょうど良い位なのです。
守備側は1人がブリッツをする事によって、
後方の守備は手薄になるものの、ブロックで1対1の状況を作る事が出来、
ブロックを打ち破りやすくする事が出来ます。

しかし鍛えられている神龍寺のオフェンスラインは、
1人のブリッツではびくともしません。
ブリッツで突っ込んできた黒木君は
きっちり山伏さんに取られてしまいました。
(ブリッツで入ってきた選手をブロックをする事を
 実況では「取る」と表現する事が多いのです)

ブリッツの最大の弱点は、本来守るべき場所に
ディフェンスの選手がいなくなってしまう事。
ブリッツを確認した雲水も、当然それを理解しており
黒木のいたスペースに走りこんだ一休にパスを投げ込もうとしました。
(ブリッツで空いたゾーンに走りこませ、QBにブリッツが
 届く前に投げるパスの事をホットパスと言います。)

一休もモン太をあっさりかわしてフリーになったのですが、
ホットパスを投げようとした雲水は、
ブリッツで突っ込んできたもう1人の選手に気づきました。
突っ込んできたのが石丸にしても、ヒル魔にしても自分には届かない……
雲水の判断は間違っていませんでした。
しかし突っ込んできたのは、セナ君でした。

1人のブリッツの場合、オフェンスラインが5人で
対応できていたとすると、QBの1人を除いた5人がターゲットになります。
守備側は5人のレシーバーに対して、
マンツーマンで守るとすると5人が必要。
するとディフェンスライン4人、ブリッツ1人、
マンツーマン要員5人で10人が必要となり、
補助を出来る人間が1人しかいなくなってしまいます。

ましてや2人のブリッツをした場合には、
レシーバーに対してマンツーマンをしていたとすると、
補助できる人間がいなくなってしまうので、
マークをしている人がミスをする=タッチダウンに繋がる
という、とても危険な状況が生まれてしまいます。
実際には、ブリッツが入ってくるとオフェンスが読んだ場合には、
RBの位置にいる選手にブロッカーを担わせるので、
レシーバーの数は減る事もあります。


しかしRBにブロッカーをさせていなかった場合、
オフェンスラインの5人に対し、
6人でプレッシャーをかける事となります。
このようにディフェンス側が、ブロッカーの人数で勝るように
かけていくブリッツをオーバーロードブリッツと言います。

オーバーロードブリッツになったプレイでは、
プレイがあっという間に終わる事が多いです。
ブリッツが届く前にパスを投げてしまうか、
それともブリッツにQBが潰されてしまうか……。
NFLで、総勢8人でラッシュをかけたプレイを
見た事がありますが、ディフェンスの取っておき
という感じで出してくるプレイなので、
ここぞと言う時にしか使う事はありません。

上でも書いた通り、守備側としてはとても危険な賭けとなる
プレイでしたが、セナ君は投げようとした雲水に襲い掛かり、
ボールをファンブルさせることに成功。
さらにそのボールを確保し、攻撃権を奪い取りました。

セナの登場にあっけに取られる神龍寺の面々、
本来セナがマークするべき阿含は……ノーマーク。
阿含を完全無視の大ギャンブルのブリッツでした。
しかし、ここまでの種まきが功を奏しています。
毎プレイ阿含にブリッツしていたので、
阿含のマークが空になる事なんて、
ほとんどの人が想像出来ていなかったはず。
その心理を巧みに突いた、1回だけの大ギャンブルプレイでした。

実際アメフトでは「見せプレイ」といわれるプレイが存在し、
その「見せプレイ」から色々なプレイに派生させて
相手の裏をかくという事が行われています。
例えば執拗にランを繰り返した後に、
渡すフリを使ったプレイアクションパスをしたり
短いパスになるルートを走らせまくった後に、
ロングパスを狙ったりと、例を挙げようと思えば
いくらでも例が湧き出てきます。

阿含へのブリッツで「見せプレイ」の種を撒き、
本当の目的は雲水へのブリッツ……
ヒル魔さんらしい狡い作戦と言えばそれまでですが、
見事に策がハマってボールを奪った上に、
阿含にも間接的にダメージを与えました。

押せ押せムードな泥門ですが、まだ得点は14点差。
奪った攻撃権は必ずTDに結びつけるのが、逆転勝利への最低条件です。
オフェンスでの次なる策が楽しみですが……
時間が無いからパスプレイ偏重にならざるを得ないのが泥門の辛い所。
どのようにその枷を打ち破っていくのでしょうか。
神龍寺ナーガvs.泥門デビルバッツ
モン太が一休からボールを奪い取り、1対1の勝負でついに勝利しました。
エンドゾーン内で雄叫びを上げるモン太がカッコ良いなぁ。
しかし泥門の面子の語彙の少なさは……
やっぱ蛭魔さんがいなくなったら苦労しそうだな。
でも確かに、凄いプレイに対しては「凄い」としか
言いようのない場合もありますけど。
NFL中継でも凄すぎるプレイの時には実況している人が
興奮してしまい。「Amazing!」とか「What a play!」のような
簡単な言葉しか出なくなっている事が良くあります。
個人的には、今回のモン太のプレイは「Incredible!」ですね。

桜庭君とまもりさんのモン太に対しての回想が
モン太の努力をさらにを引き立てくれました。
走力・体のバランス・ルートランニング・キャッチなど
WRに必要な能力はたくさんあります。
その中で、キャッチングに関してのみですが、
モン太が関東No.1である事をショーグンが認めてくれました。
本庄さんに憧れて磨き続けたキャッチの技術、
長年の練習の成果が結実し認められたモン太を見ていて
胸を熱くさせられました。

トライ・フォー・ポイントのキックも決まり21-35、
2ポゼッション差と射程圏内に入ってきました。
残り時間も8分と少なくなってきましたが、
8分で14点差は奇跡が起きなくとも十分追いつける得点差。
最強の神龍寺を泥門が追い詰めつつあるのですから、
観客席がざわめくのも当然です。

その時一休は、モン太にボールを奪われた事に対し
悔しさを大爆発させていました。
ナンバーワンを自認するからこそ、
負ける事は一度すらも許すことはできない。
「たった1回ぐらい」と思う神龍寺の他の選手に対し、
その1回すら許せないという気持ちを持つ一休。
僕はこういった心構えを持つスポーツ選手は大好きです。
阿含が一休だけを認めているのも分かります。

その一休は、モン太をライバルだと認め、
きちんと名前を聞いたうえで改めて宣戦布告。
対するモン太も負けずに啖呵を切り返しました。

続いての神龍寺の攻撃で、一休はWRとしてプレイに参加。
ボールはキャッチしたものの、モン太にボールを
奪われないようにと確保を最優先にした為、
このプレイは3ヤードゲインに抑えられてしまいます。
TDプレイ時に見せたモン太のボールへの執着心が、
一休のランアフターキャッチ(キャッチ後の前進)を
封じ込める事となりました。
時間を使いたい、しかしリスクのあるプレイは出来ない。
リードしている神龍寺ですが、さすがにこの場面では
保守的なオフェンスになってしまっているようです。

再び登場の観客席の桜庭君、頑張るモン太の姿に感化されたようです。
ライバル同士で切磋琢磨し向上していこうとする姿は、
見ている者の心を打ちますよ。

流れを引き寄せつつある泥門。
セナ君の言う通り、神龍寺の攻撃を抑えてTDを奪えば1ポゼッション差。
試合の行方は完全に分からなくなります。

しかしその流れを断ち切りにきたのは阿含でした。
ボールを持った阿含は、これまで使っていた
力でねじ伏せるランプレイではなく、
クロスオーバーステップを使ってセナ君をかわしに来ました。
突然の出来事に為す術無く阿含にかわされてしまったセナ君。
ここで失点してしまうと、敗北に大きく近づいてしまいますが……
泥門は阿含のランを止められるのか。
泥門デビルバッツvs.神龍寺ナーガ
21点を追う泥門は、ヒル魔さんの弾丸軌道のロングパスで
一気にTDを狙ってきました。

エンドゾーンに向けて走るモン太に投げられたボールは、
かなりぎりぎりの位置に落とされたパスでした。
NFLで活躍するQBのレベルになると
「レシーバーは取れるけれど、ディフェンスは触れられない」
そんな位置のボールを投げ込む事が出来ますが、
今回のヒル魔さんが投じたパスも
同じような素晴らしいパスだったようです。

完璧なパス……だったのですが、
天才CB一休も持ち前の敏捷性でボールに迫ります。
モン太でもぎりぎり届くかどうかのパスは、
一休とモン太を1対1のキャッチ勝負へ持ち込むためのものでした。

しかし本来ならこの状況はディフェンスが有利。
攻撃側はボールをキャッチしなければならないのに対し、
守備側はボールの軌道を逸らしてキャッチを防げば
パスが失敗となるのですから。

この弾丸パスでも、先にボールに触れたのは一休でした。
指先でボールを弾いてパスを防いだ一休……
でもモン太の方も一休がボールを弾く事を予測し、
その弾いたボールを狙っていました。

ここで一休がその底知れぬ能力を発揮。
ボールを弾いた所から、指を使ってボールを弾いて
そのままキャッチングしてしまいました。

キャッチの才能差でモン対に対して勝利宣言をした一休でしたが、
モン太は努力でキャッチ力を磨いてきた男。
才能があるなんてハナから思っていませんでした。

一休がボールを確保した事でインターセプトは成立しましたが、
まだ一休は空中に居るためプレイは続行されます。
この後、一休がボールを手放してパス失敗になるか、
ボールを確保したまま足の裏か手の平以外の場所を
地面に付ければそこでプレイが終了します。

一休は地面に落ちた際に衝撃でボールを手放さないように、
ボールを抱え込もうとしました。
これはボールをキャッチした選手が自然に行う事です。
しかしここでモン太がボールに手を伸ばしてきました。
野球で培ってきたボールを追う動き、
それがここ一番で発揮されました。

どんなスポーツでも、嫌になるぐらい基礎練習を行います。
これは基礎練習にスポーツの基本動作が全て詰まっているからで、
基礎練習を反復し続ける事によって、
咄嗟の場面で体が無意識に反応するようになるのです。

一休が脇にしまいこもうとしたボールに手を伸ばしたモン太。
本能的にボールの縫い目に手をかけると、
そのまま一休からボールをもぎ取りました。

このパスは本来なら、鬼兵さんが言うとおりに
パスを弾いて失敗にするだけで良かったはずです。
しかし一休は素早い反応と運動能力を持っていたが故に、
インターセプトが狙える状況となってしまいました。
まさかこれが一休の敗因となろうとは……。

ボールをしっかりキャッチしたモン太、
審判の両手が挙がってTDがコール。
ここまでやられっぱなしだったモン太がついにやり返しました。

キックはまだですがこの時点で35-20、
15点差で2ポゼッション差となりました。
しかしまだ2回のTDが必要な厳しい状況。
FGの3点を許しただけでも3ポゼッション差になるので、
まだまだ崖っぷちが続きます。
しかし勢いは俄然泥門、さらに反撃が続くのか?
それとも神龍寺が止めを刺すのか。
 
#最新トラックバック
#プロフィール
HN : あんぴ
性別 : 男性
趣味 : NFL観戦
#ブログ内検索
#カウンター
#アクセス解析
#フリーエリア
 
忍者ブログ | [PR]
"あんぴ" WROTE ALL ARTICLES.
PRODUCED BY SHINOBI.JP @ SAMURAI FACTORY INC.