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このblogは、アイシールドで出てくる戦略・用語を分かりやすく説明する事を目的とした感想blogです。火曜日23時頃更新予定(週によって前後あり)。本家サイトはhttp://fake.s22.xrea.com(プロフィール部分にリンク有)
 
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泥門デビルバッツvs.神龍寺ナーガ
モン太が掴み取ったラストプレイの権利、
泥門はそのラストプレイに最後の望みを託します。

前回の感想でも書きましたが、
通常では攻撃の際に観客を盛り上げる事はありません。
プレイ開始時に使う「Hut」の掛け声が伝わりにくくなり、
ミスが発生する可能性が高まるからです。
しかしヒル魔さんは、さらに観客を煽り続けています。
観客席もそれに応えてさらに盛り上がっていますが……
照れて恥ずかしがりながらも声を出す筧君が、
可愛いすぎなんですけど。

この声援を受けたセナ君は、一瞬ビビったものの
落ち着きを取り戻し、締まった表情に。
これだけの状況できちんと集中できるのですから、
セナ君の精神面での成長がうかがい知る事が出来ます。

阿含の方は、再びヒル魔の行動を怪しんでいますが……
一休など他の選手達は、この大歓声に飲まれてはいませんでした。
さすがに神龍寺、この程度の事で
心を乱されるチームではないようです。

神龍寺が崩れなかったにも関わらず、
ヒル魔さんはさらに煽り続けていましたが……
ここで何と栗田君がスナップしてプレイを開始。
ヒル魔さんの盛り上げのための動きがモーション扱いで、
セナ君に直接ボールを渡す「ダイレクトスナップ」という
スペシャルプレイを使ってきました。

QBの動きをモーションとしてプレイを始めるという事は、
モーションの説明をした194th downでも
印象に残るプレイとして紹介した事があります。
通常はQBがボールを受け取るところからプレイが始まるので、
ディフェンスの虚を突ける可能性があり、
大きな前進が望めるプレイなのです。

今回のプレイについては、2ページ目の最初のコマで
ヒル魔さんが煽っているシーンが描かれていますが、
ここでヒル魔さんは立ち止まっています。
この立ち止まっている描写によって、
オフェンスがプレイ前にしなければならない
1秒全員静止の条件を満たしている事となります。
ですので、この後のヒル魔さんの動きは
モーションとして扱われる事になりますので、
いつでもプレイが出来るような状態になります。

そこで栗田君は、観客を煽っているヒル魔さんを無視し、
直接セナ君にロングスナップでボールを渡しました。
この緊張の場面で、きちんとセナ君にボールを投げる事が出来る
栗田君も、良い仕事をしています。
このような緊張する場面では、ボールを投げ損ねて
プレイが崩れてしまうという事もあるのですから。

ボールを受け取ったセナ君は、
そのまま左サイドへと駆け上がっていきます。
しかし、さすがの神龍寺ディフェンスは
このスペシャルプレイにもきちんと反応。
セナ君を3人で取り囲みました。
万事休すかと思われたその瞬間、
セナ君は急ブレーキをかけ、ボールを投げ込みました。
モン太・夏彦さん・雪光と、3人のレシーバーには
きちんとマークが付いていたのですが、
ターゲットとなったのは……ヒル魔さんでした。


178th downで書いたのですが、QBに対してマークする
ディフェンスの選手というのは通常は存在しません。
この事について改めて説明し直します。

オフェンスライン5人に対して
ディフェンス側はラインの4人で対応します。
さらにQBにマークを付けない事によって
さらに1人余る事となります。
ディフェンスはこの2人の数的優位を使って、
セーフティという最後の砦となるポジションに、
人を配する事が出来るのです。

では、なぜQBにマークをつけないのでしょうか?
ランプレイの時は、QBはRBにボールを渡した時点で
そのプレイについてはお役御免となります。
ですからディフェンスは、QBを見る必要がなくなります。
パスプレイの時は、ディフェンスラインの4人が
オフェンスラインを掻い潜ってQBに迫ろうとします。
ですからディフェンスラインが、QBをマークするような
形になりますので、わざわざQBにマークを割く必要がありません。
という事で、QBと1対1でマッチアップする選手は
ディフェンス側にはいない事となります。

とは言いましても、もちろん例外があります。
今NFLで最も速いQBであるマイケル・ヴィックは
40ヤード走4秒4という脚を持っている為、
RB並みのランが出来る選手なのです。
このような「走れるQB」を抑える為に、
ディフェンスは「スパイ」と呼ばれる
QBのみをマークする選手を配す事があります。

これはあくまでも例外中の例外、
ヒル魔さんは「動けるQB」ではありますが、
「走れるQB」ではありませんので、
ディフェンスがわざわざ「スパイ」を置く必要はありません。

しかもこのプレイはランプレイでありますが、
ボールはヒル魔さん経由でなく、直接セナ君に渡っています。
ですからヒル魔さんは、通常のランプレイでは
ボールを手渡した所でやる事が無くなるはずなのですが、
このプレイでは最初からボールに絡んでいないので、
パスターゲットのレシーバーとして動く事も可能。
さらにマークが付いていない上に、
神龍寺の選手が鍛えられているからこそ
セナ君に素早く反応してしまい、
ヒル魔さんがワイドオープン(がら空き)に……。
この場面でこれしかないという最高のスペシャルプレイでした。


しかしボールをキャッチしたヒル魔さんに対し、
阿含が素早く反応して追いすがります。
阿含の知っている40ヤード走5秒2のヒル魔が相手なら
追いつけたはずです。
しかし、たった0.1秒を伸ばすために
ヒル魔さんは不断の努力で鍛え続けており、
フィールドの上にいるヒル魔さんは、
阿含の知っている「過去のヒル魔」ではありませんでした。
「過去のヒル魔」まで届いていた阿含の手も、
「現在のヒル魔」までには僅かに届かず……
ヒル魔さんは阿含を振り切るとそのままエンドゾーンへと倒れこみ、
最後の最後で望みを繋ぐTDを奪い取りました。

NFLでも、ドラフト1巡で指名され
将来を期待されていた選手が
泣かず飛ばずという例が良く有ります。
逆にドラフトでは下位指名でも、努力を重ね続け
NFLを代表する選手にまで育った選手もいます。
才能はもちろん大事ですけど、
それに胡坐をかいて努力を怠ると
下から来る者達に追い抜かれてしまう……
確かに阿含は天才だったかもしれません。
しかし練習をしていなかったのですから、
その能力を100%生かせていたとは言えないと思います。
そこにヒル魔さんが突けた「隙」が生まれたのでしょう。


セナ君がボールを投げ、ヒル魔さんがキャッチをする。
本職とは違ったプレイをするスペシャルプレイを
この場面で提案したヒル魔さんの度胸の良さは凄いの一言です。
ヒル魔さんのセナ君への信頼感の厚さ・強さも感じられました。
そしてヒル魔さんの策に応えるセナ君や他のメンバー達……
泥門の信頼感の強さが感じられるプレイ選択でした。

そして、最後の最後で神龍寺の熟練度の高さが
仇となってしまったのかも。
ランプレイと思えば、セーフティも含めて
全員で止めに行くのは基本中の基本です。
ましてやボールを持ったのがセナ君なのですから、
レシーバーをマークしていないセーフティなどが
止めに行ってしまうのは当然の事です。
そこでセナ君のランがパスに派生するだなんて
さすがに予想できないでしょう。


ラストプレイでもぎ取ったTDで34-35の1点差、
あとはトライ・フォー・ポイント……
通常ならキックで確実に1点を追加し、
延長戦へと持ち込むのがセオリーです。
しかし、セナ君の脚の状態を考えると、
ここで決着させないとまずいのかも。
運命のトライ・フォー・ポイントは
1ポイントか、2ポイントか?
成功するのか、失敗してしまうのか。
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