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このblogは、アイシールドで出てくる戦略・用語を分かりやすく説明する事を目的とした感想blogです。火曜日23時頃更新予定(週によって前後あり)。本家サイトはhttp://fake.s22.xrea.com(プロフィール部分にリンク有)
 
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泥門デビルバッツvs.盤戸スパイダーズ
セナ君のキックオフリターンTDと、
ムサシのトライ・フォー・ポイントで3点差に迫った泥門は、
続いての盤戸の攻撃をパントへと追い込みました。
これで反撃ムードがさらに高まるかと思いきや、
コータローのパントキックがゴールライン目前の
1ヤード地点でアウト・オブ・バウンズ(フィールド外の事)に。
これで泥門は、自陣1ヤード地点付近という
厳しいポジションから攻撃を開始せねばならなくなりました。

……って、こんな書き方じゃ何が何やらですよね。
という事で、パントキックについての説明と
その準備として、アメフトの根本的な部分の説明を
セットでさせていただきます。


まずはアメフトの根本的な部分について。

アメフトは、相手の陣地の一番奥にあるエンドゾーンに向かって
ボールを進めていき、得点を奪うゲームです。

攻撃側は、タックルによって止められた地点から
次のプレイを続けていく事が出来ます。
しかし、制限無しに何回もプレイできれば、
必ず相手のエンドゾーンまで辿りつけてしまう事となります。

なので、攻撃側には縛りがかけられています。
それが「攻撃側のプレイは4回まで」というルールです。
しかし、4回のプレイで相手のエンドゾーンまで進む事は
ほぼ不可能と言える位難しい事です。

そこで出てくるのが「10ヤード進んだら、
もう1度1回目から数え直し」というルール。
この2つのルールが、アメフトを理解するための基礎となる部分なのです。

4回の攻撃プレイの間に10ヤード進んで、
再び1回目の攻撃権(1st down)を獲得する、
この事を作中では「連続攻撃権」と表記しています。
ちなみに「連続攻撃権」は137th 146th downで登場、
NASA戦ではファーストダウン(1st down)という言葉が
使われていたんですけどね。
実際には「1st downを得る」という表現が使われます。
(「得る」の他にも「獲得する」「更新する」を使う事もあります)

1st downを獲得し続ければ、攻撃権を持ち続ける事となり、
相手のエンドゾーンまで到達できる可能性が高くなります。
一気に進むロングパスや、ランプレイの独走などは
見栄えが良い盛り上がるプレイでもあります。
しかし地道に1st downを獲得し続け、タッチダウンに結び付ける方が、
相手チームに与えるダメージは大きいです。
なぜなら、相手ディフェンスの選手を疲弊させる事が出来るし、
相手オフェンスが使える時間を削る事にも繋がるからです。

さて、ここまではファーストダウンを獲得した場合について、
説明してきましたが、3rd downが終了するまでに
ボールを10ヤード以上進められない場合もあります。
むしろ得点に繋がることよりも、こちらの場合の方が多いでしょう。

もし、相手のエンドゾーン近くまでボールを運んでいれば、
4th downでFGを選択し、3点を奪うという選択肢も出てくるのですが、
FGが届かなかったり、成功する可能性が低かったりすれば、
その選択肢を選ぶ事が出来ません。
かといって通常のプレイを行って1st downを奪う事が出来なかったら、
4th downのプレイが終わった後のボールの位置から
相手の攻撃が始まってしまう事となります。
そうなると、相手にエンドゾーンまでの距離が短い
良いポジションを与えてしまう事になりかねず、
失点する可能性が増してしまいます。

アメフトの本質はフィールドポジションの争い。
ボールを相手エンドゾーンに押し込み、自陣エンドゾーンに
近づけさせないようにすれば、試合を優位に進める事が出来ます。
そしてそのフィールドポジションの争いに
最も重要なのがこれから説明する「パント」です。

3rd downが終了するまでにボールを10ヤード以上進められず、
1st downを得られなかった場合。
FGを蹴る事も出来ない、4th downに通常のプレイをする
「ギャンブル」もリスクが高すぎて選択出来ない。
そんな時に出てくる選択肢が「パント」なのです。


ここからは、パントについての説明です。

ボールを持って蹴る「パント」は、1st downを得る事を諦める代わりに、
ボールの位置を自陣のエンドゾーンから
出来るだけ遠ざけようとするプレイです。
パントを蹴るのがキッキングチーム、
そのボールをキャッチするのがリターンチームとなります。

キックオフの時と違い、パントキックの場合には
キックした側は攻撃権を奪う事が出来ません。
パントを蹴った瞬間に攻撃権が失われるのです。

リターンチームのボールへの対処の仕方は主に2つ。
まずはボールをキャッチした場合。
フェアキャッチでなければ、ボールをキャッチ後に
ボールを前に運ぶリターンをする事が出来ます。
少しでも前に進めれば、攻撃開始地点が相手のエンドゾーンに
近くなり、得点のチャンスが大きくなります。
さらにもし相手のエンドゾーンまでボールを運ぶ事が出来れば、
パントリターンTDとなり、得点を奪う事も出来るのです。

2つ目はボールをキャッチしなかった場合。
この場合はボールが静止した地点から攻撃をスタートする事となります。
ただし、ボールがエンドゾーンに入った場合には、
20ヤード地点にボールが置かれる事となります。
これをタッチバックと言います。
フィールド外にボールが出た場合にはボールが出た地点から、
空中で出た場合は、ボールが空中で線をまたいだ地点から、
リターンチームの攻撃がスタートする事となります。

NFLでは、パントキックの平均距離は40ヤード超、
そしてボールの滞空時間は4~5秒です。
ここで思い出して頂きたいのが、
作中でも今まで何度も出てきた40ヤード走。
これはパントの飛距離とほぼ同じです。
そして滞空時間の方も40ヤード走のタイムとほぼ同じ。
という事で、リターナーがボールをキャッチする頃には、
キッキングチームの選手が目前に迫っている事が多いです。
ここで出てくるのが、前々回に書いたフェアキャッチ、
リターンする権利を放棄する代わりに、
キャッチ後にタックルを受けないようにする事が出来ます。

ちなみにNFLでのパントの最長記録は、
1969年にスティーブ・オニールが記録した98ヤード。
自陣1ヤードから敵陣1ヤードまでが98ヤードなので、
これ以上の記録は出ないという限界値ですよ。

パントが飛べば飛ぶほど、相手チームのポジションを
自陣のエンドゾーンから遠ざける事ができ、
得点の可能性を減らす事へと繋がります。
かと言ってパントが遠くへ飛んだだけで滞空時間が短いと、
リターナーの周辺までキッキングチームが辿り着けず、
リターナーをタックルし損なう事により、
大きなリターンを許してしまう可能性が出てきます。
ですのでパントには、距離と滞空時間の両立を要求されます。

そしてパントには、コントロールも必要となります。
リターンチームのボールへの対処のところでも書きましたが、
パントしたボールが相手陣のエンドゾーンに入ってしまうと、
タッチバックという扱いになり20ヤード地点に
ボールが置かれる事となります。
タッチバックになると、キッキングチームにとっては大損。
もしエンドゾーンぎりぎりの所でボールが止まれば、
相手の攻撃は1ヤード地点から開始となるので、
エンドゾーンに入るか入らないかで最大で19ヤードも
ポジションに違いが出てしまうのです。

コータローのキックは、エンドゾーン目前の1ヤード地点で、
ぎりぎりフィールド外に出たため、
泥門は空中でボールが外に出た1ヤード地点付近から
攻撃開始という厳しい状況に追い込まれました。
コータローはボールを置いて蹴るプレースキッカーだけでなく、
ボールを持って蹴るパンターも出来るんですね。
しかもパントキックでもコントロール抜群、凄いなぁ。

NFLではパンターとキッカーを兼任している人はいません。
もちろん選手はどちらも出来るのですが、
高いレベルを要求されるポジションなので、
両方を兼任するという事はほとんどありません。
しかし、チームにキッカー・パンターは1人ずつしかいないので、
試合中にどちらかが怪我で居なくなってしまった場合には、
緊急避難的にパンターがプレースキックを、
キッカーがパントを蹴る事もあります。

珍しいケースとして、怪我したキッカーの代わりに
LBがトライ・フォー・ポイントを蹴った試合が今シーズンありました。
たまに遊びで練習していたとの事ですが、
キッカー関連でない選手が実戦で成功させるなんて凄すぎです。


攻撃の開始位置が自陣のエンドゾーン目前の場合、
攻撃側は少しでも押し戻されてしまうと、
セーフティ(自殺点・西部戦で登場)となってしまう可能性があります。
ですので、ブラストなど大きな前進は望めないものの、
少しでも前に進めるようなプレイを選択せざるを得なくなります。
以前、西部も同じような状況に追い込まれましたね。

もちろんパスを投げるという選択もありますが、
もしインターセプトされてしまうと、
そのままタッチダウンに繋がる恐れがあります。
セーフティの2点を恐れて、TDの7点を与えてしまっては本末転倒ですから、
保守的なプレイ選択となるのはやむを得ません。

自陣のゴール前では保守的なプレイ選択をするため、
1st downを奪いにくく、パントに追い込まれやすくなってしまいます。
しかしゴール前に押し込まれた側は、このような状況では
パントでも良しとしなければなりません。
パントを蹴る事が出来れば、ひとまずは危機を回避できますから。

コータローのミラクルパントで厳しいポジションに
追い込まれら泥門は、やはり1st downを奪えなかったようです。
パントを蹴るのは……こちらもキッカーと兼任のムサシさん。
そのムサシのキックは高く高く舞い上がっていきました。
ここでの鈴音ちゃんと真田の対決が面白すぎ。
こんな所で場外乱闘かい。

ムサシのパントはバウンドも良かったせいか
転がりながらハーフウェイラインを超えました。
楕円のボールですから、バウンドの方向は運任せ。
今回は泥門から見た時に前へと転がっていったので、
泥門にとってはラッキーバウンドでした。
パントで敵陣まで押し戻せたのは大きいですよ。
50ヤード近くは押し戻した事になりますから。

さて、ボールが転がっているシーンでの
赤羽の台詞も知らない人には分かりにくいですね。
それではこの部分について説明を。

上で書いたように、パントの際にはキックした側が
ボールを確保しても、攻撃権は相手に移ります。
しかし、一度でもリターンチームがボールに触れてしまうと、
キッキング側にもボールの所有権が発生するのです。

今回のようにボールがバウンドした場合、
不規則なバウンドをしているボールを拾い上げるのは難しいので、
ボールを拾い上げずに転がるままに任せる事となります。
もちろん拾い上げてリターンしても良いのですが、
一度バウンドをしている為フェアキャッチは出来ません。
という事は、ボールを拾う瞬間にタックルを受け、
ボールが確保できないという最悪のケースが考えられます。
ですので、バウンドしたボールに対してリターンチームは、
出来るだけボールから離れてボールに触れないようにします。

逆にキッキング側は、ボールが前方に転がっている場合は、
ボールの周りを囲みこみ、ボールの行方を見守ります。
もし進行方向と反対方向に転がりそうになったら
すかさずボールを拾い上げます。
このようにして、出来るだけボールを自陣エンドゾーンから
遠ざけようとするのです。

ムサシのどでかいパントを見て、神妙な表情を浮かべたコータロー、
スマートでないポーズでタイムアウトを使いました。
ヒル魔さんも「?」を浮かべるタイミングでのタイムアウト、
何か意味があると思いきや……コータローあんたお馬鹿すぎや。

試合がまだ前半で良かったですよ。
前半のタイムアウトも大切ですが、
後半のタイムアウトの方がよっぽど大事ですから。
でも、このタイムアウト1個が有るか無いかで、
前半の終了に近づいた時に微妙な影響も出ますよ。
しかしこのおばかなコータローのおかげで、
盤戸のエピソードが聞けたわけですが。
赤羽、いいやつじゃん。
コータローの熱い言葉にほだされたのか、
1人だけ盤戸に戻ってきてさ……。
もちろん赤羽だけは引き抜きではなく、父親の転勤が要因だったので、
戻って来やすい環境だったのですけど、
それでもキックチームの力を見せるために出場停止期間も覚悟の上で
戻ってきたのですから、これを男と呼ばずになんと呼ぶんですか。

回想明けはコータローのキックからスタート。
という事は、盤戸の攻撃を泥門は止めたんですね。
厳しいフィールドポジションを強いられてはいますが、
得点を奪われていないのは、試合開始直後に立て続けに
失点していた時から比べれば格段の進歩。
後は得点を奪うだけですが……。

パントリターンをしていたセナ君に、赤羽が襲い掛かってきました。
初めての直接対決、勝負の行方は?
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